池田にいる若者移住者は、なぜ池田に来ることを選んだのか。
若者移住者にひとりひとり出会いながら、話を交わすことで、その疑問を深ぼっていく。
若者移住考なるものを、本格的にシリーズ化します!(まりこ)
毎度ながら、このシリーズを始めるにあたって私なりに考えた
「若者移住者の話を集めていくことの意義」について触れておきます。
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いま若者の地方移住が社会現象化していると言われています。
若者の地方移住に関するイメージや、言説が増えてきているとも言えるでしょう。
そんな若者の地方移住をリアルに即してミクロでみてみる。
ミクロでみて考えてると、何が浮かび上がってくるのか。
そしてそのミクロ(個々人の移住に関するあれこれ)が集積した時に、立ち上がってくる「若者の地方移住」とは何なのか。
移住の話は、いち個人の話であると同時に社会の話だとも思っています。
「立ち上がってくる若者の地方移住」を通して、ひいては今の池田町を、地方を、社会を考えていくことができたらと思っています。
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ちなみに
vol.1は、あたくし。
vol.2は、蛇を食べちゃう清野くん。
最後に若者移住「考」の主語について。
これは、当然ながら記事を書いている私、でありながら
読んでくれた方が「考える」という意味を込めたいです。
このブログの特性上、インタラクティブな意見交換が難しいですが
私だけでは視点や考え方が限られているので、読んでくれた方の「考」も聞けたら嬉しいです:)
今回登場するのは
北條春乃(ほうじょう はるの)さん!
23歳のときに永平寺町から池田町へ移住し、幸寿苑で働き始めて3年経ちます。
彼女を池田町へ向かわせたものは何だったのか?
住んで何を感じているのか?
ちょっとばかり、お時間を共にしましょう。
*本文は公開前に本人に読んでもらって了承を得るステップを踏んでます。
福井県内で1番の高齢者率である池田町、そこで出会えた人と施設
はるのさんが池田町へ初めて来たのは、大学4年の2018年夏。
住み始めたのは2019年の3月である。
来たきっかけと、移住の理由を聞いてみた。
(以下、北條(今回のゲストの北條春乃さん)、川上(=この記事を書いている「まりこ」)で書きます。)
川上:池田町に来たきっかけと、移住の理由を聞いてもいいですか。
北條:2018年の8月に大学のフィールドワークがあって、8月末の4日間めちゃくちゃ暑い日だった。
学生は4人くらいで、連日べこ亭に泊まって。
川上:どんな授業だった?
北條:高齢者率が高い池田町をどう支えていくか?みたいな授業。先生が高齢者福祉専攻で、
高齢者率が福井県内で1番高い池田町は、地域福祉を考えるにはぴったりだってことで。
主に社会福祉協議会の方が紹介してくれた人に、話を聞きに行ったんだけど、その授業がすごい面白かった。
なんと大学のフィールドワークがきっかけだという。(私も同じパターンなので大変驚いた)
そしてはるのさんの移住には、池田町にある高齢者福祉施設の幸寿苑が大きく関係している。
北條:フィールドワークで訪れた幸寿苑が面白くて。まず、市町村の中で施設が1個っていうのもすごく珍しい。
例えば、福井市だったら施設がいくつかあって、いろんな地域の人が集まるから利用者さん同士が知り合いじゃない場合が多い。
幸寿苑では、利用者さんが屋号でわかったりしてて。それも面白いなぁ、いいなぁって。
川上:池田の幸寿苑が移住理由の大きい部分なのかな。なんで幸寿苑で働こうと思ったの?
北條:池田の前は、永平寺町の実家にいて実家を出たいという気持ちはあった。県外は考えてなくて、県内のどこか。
あと、高齢者福祉の仕事をしようと決めてて。(フィールドワーク前に)実習でお世話になった施設は福井市の街中の施設だったんだけど、
利用者さん同士であまり会話がなかったりとか、落ち着かない感じ・・・?ほんとは生活の場なのに、よそにいる感じがあった。
やっぱり地元じゃないところに入ってるからなのかな。福祉施設の意味をすごい考えさせられたのね。
でも幸寿苑では、利用者さんが「ここはどこや〜?」って言う時に、「常安や〜」って返すとみんな「常安か〜!」ってすごい安心する。
(*常安とは、幸寿苑が位置する集落名) 利用者さんはほぼ池田の方で。施設って、安心してる人もいたんだって。いいなぁって思って。
幸寿苑で安心して生きるおじいちゃんおばあちゃんの姿があった。
はるのさんは、いいなぁと思える高齢者福祉の場が池田にあったから来たと語る。
幸寿苑とは別に、こんなエピソードも教えてくれた。
北條:フィールドワークの世話をしてくれた役場の方に楽器しますか?って聞かれて、
ピアノとかギターちょっとしますって言ったら、イケレコ(池田町の音楽活動グループ)に気軽に誘ってくれて!
あ、そんな気軽に(池田の)輪の中に入っていいんだなぁって。
これは私も共感するところであるが、
誰かの何気ないちょっとした言葉が自分の中に残って人生の選択に関わったりするヨネェ....。
川上:私もよく聞かれる質問するね笑
フィールドワークがあった大学4年の夏って就職決まってる頃だと思うんだけど、決めなきゃとか不安はなかった?
北條:なかった〜、何も考えてなかった笑
フィールドワーク来る前も考えてない笑
どこかあると思ってたし、幸寿苑行って「あっここいいなぁ〜」と思えて決めた。
池田町は、数多くの市町村が失ってきた(失わざるを得なかった)暮らしの姿があるからか?
学生のフィールドワークや団体が視察に来ることが多い。(と思う、よくそれっぽい団体さんを見かける)
学生に限って言えば(私のフィールドワークもそうだったが)、授業の主目的が調査や研究であったとして、
それに加えて副目的には、地域に入ることで自分の人生やモデルコースを探求するということをこしらえてたりする。
学生なんてまさに人生模索中の代名詞だろうし。そういう副目的が的中したのが、はるのさんや私のような人ではないか。
そして2人の共通点は、就職に焦ってなくて卒業が近づいても就職先を決めてなかったということと、
「いいなぁ」という気持ちに従って池田に来たこと、である笑
先を決めてないという漂流の中に、ご縁は舞い込むものだろうか?
移住の背景に潜んでいた「福井の意識」
私は、はるのさんの言葉で少し気になったことを聞いてみた。
川上:実家を出たかったことについてなんだけど「県外は考えてなくて県内のどこか」ってなんで?
北條:福井って長男や長女が家を継ぐみたいな感じがあって。永平寺町もそんな感じなんだけど。
うちは4人兄弟で、1番上は京都にいて2番目は海外にいて、ふたりはもう帰ってこない。
だから3人目の私が継がなきゃいけないっていうのを中学生の頃からなんとなく思ってて。
福井は出られないっていうか出ずに考えようと思ってたから、高校・大学も県内にした。
川上:え?継ぐって何を??家業があるの??
北條:いや、全然ない。お墓とお仏壇のこと。親に継いでって直接言われるってより、あなた福井にいるよね?っていう前提で話される。
川上:びっっっくり!!それは不満ではない?
北條:なかったの。でも最近妹に任せたいなぁっていう気持ちも。池田来てめっちゃいい所だし自分で何かするなら池田でしたいと思ってて。まだ妹がいるって思うようになってきてる。池田に来てから(県外移住を考えてなかった理由について)気づいた。
川上:池田町にしばらくいるの?
北條:う〜ん、うん・・・。
実家の永平寺町のお墓とお仏壇のことがあるから戻らないとという気持ちもある。池田に住むんだっていう決心が早くつけばいいと思うんだけど・・・。
自分が3世帯同居だったのもあって、3世帯同居いいなって思う。お父さんお母さんにないゆるさがあるから笑 親に怒られたらおじいちゃんの布団入るとか笑 夕方になったら相撲一緒に見るとか笑 住むなら3世帯なんだよなぁ〜とか思って、難しい。いろいろ悩んでる。
この話は、私にとって衝撃的でした。
家業ではなくて、お墓やお仏壇を継ぐという類の話を初めて聞いたものでして。っていうのを話したら
逆にすごく驚かれました。
ベッドタウンのマンションで育った私と、何代にも渡って続くおうちで育った春乃ちゃんの
社会構造のちがいと、その社会構造が知らぬ間に自分を規定しているのをまざまざと感じた瞬間でした。
「実家を出たい」の真実
話していくうちに、春乃さんの思いがぽろっとこぼれた。
北條:福井にいるのが当たり前だったけど、上2人をみてて県外とか海外出てる姿がなんか羨ましくって。話してて視野も広い。
自分よりもいろんな人と出会ってるだろうから。この先自分が大人になって価値観狭いまま・・・
高校が勝山だったから行動範囲が実家から20キロくらい笑 価値観を広げたいなぁと思って、それで実家を出たいって。
それで行ったことない池田いいなと思って。福井だけど、高齢化率がすごい高かったりとか・・・すごい面白そうだと思って。
私は、春乃さんのこの言葉たちが大変印象に残っている。
インタビュー中に筆を走らせた紙には、「池田町=福井の中の異国?」とメモしている。
市街から離れた山の中にある町に、大いなる冒険の余地を読み取ってはるのさんはここへ来たのではないか。
そうしてやって来た池田町に実際3年間住んでみてどうか。
春乃さんに聞いてみるとー。
北條:池田町って古いようで新しい。
昔からの寄り合いとか、地区の行事が残っている。
一方でココラカラとか小豆書房とかべこ亭さんとか、新しい取り組みも
地域の人は受け入れていると感じる。
それに、人があったかいなぁと思う。住んでて感じるようになった。
例えば、玄関に野菜かけておいてくれたりとか。おばちゃんが畑を
貸してくれてるんだけど、それも「かぼちゃを育てたい!」って言ったら、
「広いところじゃないとあかんでうちの使いね」って言ってくれた。
土地代を払うのかなって思ってたら、口約束で貸してくれた。
なんか、池田のゆるい感じも大好き。
コミュニティのご縁を大切にしたい
はるのさんは今月いっぱいで幸寿苑を退職する。
やりたいことが見つかったそうで「介護の仕事をして気づかせてもらった。人を癒す仕事をしてみたい」と語る。
転職先は福井市にあるというはるのさん。池田を出て福井市に引っ越すことは考えてないという。なぜかー。
北條:もともと運転が好きで、苦じゃない笑
薮田(春乃さんの住居がある集落名)の人好きだし、畑かりてるし、バレーもコーラス(池田町のクラブ活動)も楽しいし。
コミュニティがこっちにある。それを切りたくないくらいの人たちだから。コミュニティがあるのが1番かも。
川上:コミュニティが春乃ちゃんを池田に繋いでるんだねぇ(しみじみ)
北條:そうだねぇ、ゆるっと時の流れに身を任せて生きています笑
なんとも「池田らしい」言葉である。
【オマケ】
こうして改めて人の移住ストーリーに向き合うと、
背後には数え切れないほどたくさんのことあって、それらが関係した結果なのだなぁと気づかされます。
vol.1とvol.2の若者移住考も踏まえると
移住には、何かを積極的に求めて動く次元と、
「ここから出る」という逃走の次元を見いだすことができるのでは、と思いました。
また、私は最近ぽやぽやと
「地方が面白い!池田町が面白い!」の「面白い」を解体してみたいと思っていて
池田町が面白い=サイズ感が面白いと言い換えられるのではないかと思っています。(他にも言い換えがある中の1つ)
例えば、春乃さんの、幸寿苑で常安や〜って言うとみんな安心する話。
ほとんどの施設が多地域と合同するサイズ感である中で、池田町は珍しく1つの施設でやっている。
大きすぎない人口約2300人の町のサイズ感だからこそ起こる「面白さ」がある。
池田が面白い!のうちのひとつは、サイズ感に起因しているのではないか、そう思うのです。
【編集後記(なるものを綴る)】
とてもやりきれないことをやっている。
たった1時間程度のインタビューで、
人が生きた26年間の一部をまとめようとしているおこがましさというか、
圧倒的厚みの差にひるんでしまう。
そして私が書く以上、はるのさんの話がそのまま届くわけなくて、
結局書く人(私)のフィルターを通して、
読まれることへのおそろしさも抱えてる。
1時間のインタビューをどう書こうかと、とても悩んだ。
話の流れを区切って、大きな文脈を掴むための見出しをつけるのも、
ところどころ私が恣意的に太字にするのも、
人の人生を工作するかのようにちょきちょき切り取って貼ることではないかって
悶々としながら。
それでも、それでも書く。
それでも書こうと思うライフヒストリーがある。んだ!
ここまで読んでくれて、ほんとうにありがとうございました:)
まりこ
(本名 川上真理子)
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大都市で24年間をTO DO(したいこと)ファーストで
生きてきて、大学3年の時に自分の在り方の大切さ
に気づく。
ご縁がありたまたま出会った池田町での
素朴で等身大な人や自然に惹き付けられ
大学院卒業後、新卒無職で池田に移住。居候ちう。
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現在の活動はこちら👇
●池田町見習い人(めざせ何でも屋)
●一般社団法人の立ち上げ手伝い
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好きな食べ物)ちんころいも※池田町限定
現在、畑仕事や古民家改修により筋肉強化中。