池田にいる若者移住者は、数ある地域の中から、なぜ池田に来ることを選んだのか?
若者移住者にひとりひとり出会いながら、ことばを交わすことで、その疑問を深ぼっていく。
若者移住考シリーズ、第5弾。
今回は、あそびハウスこどもと森で働く、古瀬咲奈さん(通称ちゃっきー)です。
ちゃっきーさんは、兵庫県出身。
専門学校卒業後、池田町へ来てあそびハウスで働き始めました。
どうして池田町に来ることを選んだのか?
どんな考えがあったのか?
はたまたとんだご縁があったのか?
池田に来る前編
「『本当にそれでいいの?』母の問いかけから始まった、やりたいこと探しの旅」
池田との出会い編
「木育施設で働きたい。『施設に一目惚れ』して池田町へ。」
池田で暮らして〜仕事編〜
「働き始めてまる3年。コロナ禍に冬季鬱の怒涛の1年目を振り返る」
池田で暮らして〜暮らし編〜
「池田暮らし4年目。たくましく、助け合いながら生きてゆく。」
の合計4編でお届けします。
「本当にそれでいいの?」母の問いかけで始まった、やりたいこと探しの旅。
ちゃっきーさんは、池田町へ来る前、岐阜県立森林文化アカデミーという専門学校にいました。
森や木に関することを学ぶ超面白い学校です!(まりこの個人的な感想)
池田町に来ることになった理由とも関わってそうなので、森林文化アカデミーのことを聞いてみました。
(以下、質問者(筆者)をまりこ、ゲストをちゃっきーと記します)
まりこ:ちゃっきーさんは、なんで森林文化アカデミーに行ったのですか?
ちゃっきー:それを話すと長くなりますね〜。ご縁があって。最初はどこでもいけそうな大学でいいやって思ってたんです。
そしたら母が「本当にしたいことないの?ほんとにそれでいいの?」って。「大学行って目的なく勉強して、会社就職してノルマだけこなす人生になるよ。それは面白くないよ」って。自身がそうだったみたいで。それで、探す旅にでました。
まりこ:ええええ!!!すご〜〜〜〜!いつですか!?
ちゃっきー:高校三年の夏休みに。自分が何をしたいかわからなくて・・・でもものづくりは興味があったし、工作が好きだよねって親と話して。でも、ものづくりっていろいろある。木なのか、鉄なのか...それで最初ガラスいいねってなったんです。吹きガラス体験のために滋賀に行きました。
滋賀の吹きガラスに始まり、京都の伝統工芸を学ぶ伝統工芸大学校、大阪芸術大学にも行ったちゃっきーさん。
木工との出会いはたまたまでした。
ちゃっきー:おばさんが、いつでも見学できる高知の木のおもちゃの工房をたまたま見つけてくれて、木工いいんじゃない?って、そこへ行ったんです。働けるならそこで働きたいと思うくらい良くて。でもそこの人に「本格的にものづくりしたいなら勉強した方がいいよ」って言われたんです。そしたら、そこで働いてる職人さんが「長野の上松の職業訓練校見に行ってごらん」って教えてくれました。あと「神戸の芦屋にも木工製品を販売してる面白いところがあるから、そこへ行ったら繋がりが広がるかもしれない」と。
まりこ:高知のところの人、めちゃくちゃいい人だね〜涙
ちゃっきー:はい。それで神戸の方へ行ったら、そこの社長さんが「面白い学校があるんだよ」って教えてくれたんです。「ひとり先生を知ってるから紹介してあげるよ」って。
なんとそれが、ちゃっきーさんが進学することとなる森林文化アカデミーでした。
ちゃっきーさんは、二泊三日で長野の職業訓練校と岐阜の森林文化アカデミーの見学へ。決め手は何だったのか?
ちゃっきー:長野の職業訓練校は、theものづくり!みたいな。基本年上の人が多くて、寮生活なのでそこもちょっと不安があった。あと、山に囲まれてぽつんとあるところだったので覚悟が必要だなーと。
まりこ:アカデミーはどうでした?
ちゃっきー:アカデミーは、木のことも、森のことも、木工のことも勉強できるよって言われて。まだ「本当にものづくりか?木工か?」っていうところだったので、職業訓練校みたいに一本に絞るのが怖いと思って。もともと森とか好きだったっていうのもあるし、幅広くやりたいと思ってアカデミーに。
まりこ:不安とかなかったですか?
ちゃっきー:職業訓練校は不安だったけど、アカデミーはいける!ってなって。先生も事務員さんも優しかったし、一人暮らしもしたかったし。迷わずそこを選びました。
探す旅は、常にお母さんと二人三脚だったと言います。
とことん探し尽くして、辿り着いた岐阜県立森林文化アカデミー。ここで学んだ2年間が、どう池田町へと繋がるのでしょうか〜?
木育施設で働きたい。「施設に一目惚れ」して池田町へ。
まりこ:卒業後、池田町のあそびハウスで働き始めたとのことでしたが、なんであそびハウスを選んだの?
ちゃっきー:木育施設で働きたかったんです。でも卒業する時も就職を迷って、木育の道に進むか、でも木工したいという気持ちもあって。今だったら職業訓練校行ってもいいって思ったので、夏に母と旭川にある職業訓練校を見に行きました。家具のお祭りみたいなのやってて、木工所の見学もできたりするのでそのタイミングで。
まりこ:卒業後の進路で、木育施設に就職か、職業訓練校かって迷ったってことか?
ちゃっきー:そうですね。木育か、木工か、みたいな。木っていうのは決まったけど、木で何をしたいのかっていうので悩んで。
こうして卒後の進路を探しに北海道へ飛んだちゃっきーさんたち。ちゃっきーさんは初めての北海道の広さに「びびった」と言う。
だだっぴろい道をバスで移動してる間「広い・・・!何もない・・・!」と感じ、さらに雪のことや、実家に帰る際に飛行機を使わなきゃいけないことを考えると寂しくなってしまったそう。ちゃっきーさんは、感じたことをお母さんに伝えます。
ちゃっきー:職業訓練校行く前に母に「お母さん、わたしここには住めない」って言いました笑 やっぱり学校に行く間は、住むじゃないですか。住むこと考えると、岐阜で一人暮らしした経験からして、無理だわってなって、見る間もなく帰りました。
まりこ:そっかぁ!その感覚大事だよね。そのあと、木育の道を探して池田に?
ちゃっきー:そうです。でもほんとは、兵庫とか関西に戻りたかったんです。けど、いかんせん私が選んだ道は木育だったから、関西に少なくて。たまたまインターネットのハローワークであそびハウスを見つけて。福井県も行ったことなかったし、ましてや池田町は知らなかったです。
まりこ:池田町は、住めないって思わなかった?
ちゃっきー:池田は、施設見た瞬間にいい場所だなぁと思って。施設に一目惚れした。ここで働きたいってなった。その時の専務が、すごい「こういう町にしたい、こういう風にしたい」って夢を語ってて。当時の館長の人も「こんな施設でね〜」って丁寧に教えてくれて。あそびハウスで働いてたスタッフの人がすごく優しかったんです。で、ここにしようかなぁって。
「ここに住めるかなってよりは、ここで働きたいっていう想いが強かった」と、語るちゃっきーさん。
木育の道に進みたいという気持ちが、ありありと伝わってきます。ちゃっきーさんが、木育に魅せられた理由は何だったのか?
まりこ:木育がキーワードになってるね。木育への思いはどうやって生まれたの?
ちゃっきー:アカデミーで、林業やって、林産業やって、木工の勉強やって、ひととおり勉強した。大工さんのところで一週間寝泊まりして建築もやった。それで、最後に自分で木育の授業を選択したんです。
まりこ:ええええ!めちゃくちゃ楽しそうで羨ましい。木育は最後だったんですね。
ちゃっきー:はい。ひととおりやってきたもんだから、自分の中で当たり前になってんです。木ってこんな匂いするよとか、見た目がこんなにちがうよとか。だけど、授業でお客さんにコースターづくりのワークショップする機会があって。コースターづくりの前に「木ってこんな種類があって、こんな匂いがするんですよ〜」ってやってたら、お客さんが「え!?すごい!」みたいな。自分の中で当たり前になっていることを話しているから、こんなこと聞いて誰が楽しいんだって最初思ってたんですけど・・・あっ知らない人がいるんだ、こんなに良い反応してくれるんだって。「すごい良い匂いする〜!」とか親子で感動しているのを見て、面白いなと思いました。
ワークショップをきっかけに、木育を面白いなと思ったのが1番のきっかけだったそうです。
自分にとって当たり前になっていたことを話してみたら、喜んで感動してくれる人がいた。
そうした人たちに出会ったことで「私が何か人に伝えられることがあれば、伝えたいな」と思ったちゃっきーさん。「森のことを知らない人が、興味を持って、森に従事する人が増えてくれればいいな」と語ります。
働き始めてまる3年。コロナ禍に冬季鬱だった怒涛の1年目を振り返る。
2020年3月から池田町に住み始めたちゃっきーさんは、今年池田暮らし4年目を迎えます。
まる3年間暮らしてみてどうか?池田町での仕事と暮らしのことを聞いてみました。
まりこ:今の仕事と、アカデミーでの木工とか研究はどっちが楽しい?
ちゃっきー:今の仕事かもしれない。今はここでやりたいことがあって。
まりこ:やりたいことは何ですか?
ちゃっきー:今まで仕事を覚えるっていう感じで...。まだ自分のやりたい木育ができてない、まだ達成できてないなって。3年いるけど、まだ1年目みたいな。
まりこ:自分がやりたい木育っていうのは具体的にどういうことなの?
ちゃっきー:ちゃんと前もって、木の話したり、スライドとか見せて「へえそうなんだ!」って思ってもらえるようなワークショップをしたいなって常々思ってて。3年経って、ようやくやってみようかなって。コロナもあったりして。まだまだ勉強中です。
ちゃっきーさんは、自分が面白みを感じた木育の原点のようなワークショップの実現に向けて
夏に木育インストラクターの資格を取りに行くそうです。
まりこ:そっか、ここでの仕事は楽しい?やりがいもある?
ちゃっきー:そうですね。毎日同じことするのが嫌な人だから、いまも毎日いろんなことできてて。それこそウッドラボ(町にある木工施設)で仕事することもあれば、あそびハウスで仕事したり、たまにTPA(あそびハウスと同じ「まっちUPいけだ」が運営する観光施設)行ったり。
ちゃっきーさんは、ワークショップ以外にもいくつかの商品をプロデュースしました。
例えば、こちら!
魚釣りキット
ぶんぶんゴマキット
カスタネットキット
木のカメラキット
ビー玉コロコロキット
私は、魚釣りキットで遊んだことがあるのですが
水に強いヒノキで作られており、お風呂の中でリアルな釣りのように楽しめるのが良かったです♩
池田暮らし4年目。たくましく、助け合いながら生きてゆく。
ちゃっきーさんが、池田町へ来て働き始めたのは2020年4月。ちょうどコロナ真っ只中でした。
4年目を迎えて、池田の暮らしのことをどう感じているのでしょうか?
まりこ:池田町の暮らしが良くてってよりかは、ここで働きたいと思って来て。もちろんここで住むから、ここでの暮らしも体験するじゃないですか。それを3年間やってきてどう感じてますか?
ちゃっきー:んーと、それも仕事と同じでやっと慣れてきました。
まりこ:いや〜そうだよね。
ちゃっきー:1年目はほんとすごかったです。慣れない土地で、自分の常識が通用しない場所みたいな・・・。例えば、すぐカビ生えるんだって。ものにカビ生えるっていう概念がなくて。食べ物は生えるじゃないですか、ものに生えるんだ!って。
まりこ:何に?
ちゃっきー:ラックとか。池田町の人に「ラック持ってきてる?捨てた方がいいよ。カビ生えるから」って言われて。気にせず使ってたけど、空気悪くなったなって思った時があって、ラックの裏みたらめっちゃカビがあって。すのこもカビて、布団もカビて、靴もカビて、家の梁もカビて。
まりこ:え・・・?そんなにやばいのか?私あんまりカビたことないかも・・・。
ちゃっきー:今住んでる所が日当たり悪いかなぁ?カビと雪。衝撃的でした。
まさか、こんなにもカビの威力を感じながら生活している人もいたとは・・・。
どうやら特に1年目の池田暮らしは楽なものではなかったようです。私は気になってことを聞いてみました。
まりこ:それでも、どこかへ行こうとか思わない?
ちゃっきー:いや1年目の冬ほんとうに帰りたくて。辛すぎて。初めての冬で。体調崩しちゃって。コロナも流行ってるし。外はずっと雪降ってるし、暗いし。しかも1年目すごい降って。ずっと泣いてました。
まりこ:ええ
ちゃっきー:毎日ずっと泣いて、体調崩して、有給使い果たして。仕事にも出れないみたいな。
まりこ:冬季鬱みたいだね。
ちゃっきー:あそうそう、言われました。病院行った時に。冬季鬱だねって。何が辛いってわけじゃないけど、辛くて泣いてた。高熱出たり、食欲なくなったり、夜間病院にも行ったりしたけどコロナじゃないし。親に電話しました。帰りたいって。雪が原因で、ゲンキーからものがなくなった時もありましたね。
まりこ:ええー!?雪が原因で?そんなことがあっても、ここに居続けたのがすごい。
ちゃっきー:それでも、ここで働きたいから来たんでしょ?って自分で自分に言い聞かせて。また春になったらのどかな池田が戻ってくるからそれまでの辛抱だって。
まりこ:春がほんとに待ち遠しい気持ちだね。
ちゃっきー:そう。もう冬は毎日雪かき。仕事中にあそびハウスの雪かきやって、仕事おわって自分の車の雪かきやって、家に帰って自分の家の雪かきする。また朝自分の家雪かきやって、あそびハウスの雪かきやって、車の雪かきやって。すごい綺麗にしたのに、次の日には同じくらい積もってる。もうきりがないって。なんでここにしたんだっけ?って最初なっちゃった。
まりこ:うん、初めての時はきっと思うと思う。それを我慢できるくらい、ここで働きたいっていうのはすごいわ。
ちゃっきー:コロナの大変な時に雇ってもらったし、自分のやりたいことができる場所って自分で思って来たから。でもそん時はもうだめだって思ったけど、春になってゆっくりした時に考えようって思ったんです。
まりこ:今は、冬なんだか夏なんだか気温差がすごいよね。
ちゃっきー:笑 でも池田で生きてたら、すごくたくましくなれるなって思う。ゲンキーから物がなくなった時も、食料保存しなきゃとか。
まりこ:それは私もすごく思う。
ちゃっきー:強くなる。生活レベルあがるなって。別にあがらなくてもいいけど・・・笑 (生活レベルを)あげようと思ってない、勝手にあがっちゃうの。
「あげようと思ってない、勝手にあがっちゃうの」これは名言!と思いました。池田の暮らしぶりを言い当てているというか。
大変なこともありながら「ここで働きたい」という強い想いで今日まで、ここで暮らしているちゃっきーさん。
池田町の好きなところは、人だと語ります。
ちゃっきー:でもやっぱり思うのは、池田って人がすごくいいなって。気にかけてくれる人がいる。
まりこ:それはすごく思う・・・。
ちゃっきー:すごいお世話になった人がたくさんいて。なかなか、ないよなって。こんな縁もゆかりもない所に来て、こんなに助けてくれる。
まりこ:私も助けてくれる人がいるから、ここで暮らしていける気がしてる。
ちゃっきー:なんでこんなに助けてくれるんだろう?って。で、そのひとりだった仕事の先輩に聞いてみたことがある。そしたら「私もそうしてもらったから」って。岐阜から運転して福井に来て「今日から宜しくお願いします」って言ったら「よく来たね〜、大変だったでしょう」って。「障子やぶれてたから、張り替えておいたよ〜」とか。あと、地域のおじちゃん紹介してくれて、なんかあったらこの人頼ったらいいからって。すごく助けてもらった。めぐりめぐって自分もそうしないといけないなって思う。
〜編集後記(的なもの笑)〜
数ヶ月前に、ちゃっきーさんと雑談をしていたら
「森林文化アカデミーにいて、木工から木育へ転向して、ここへ来た」
とざっくり聞いて、とても興味があり今回のインタビューに至りました。
まさかの「したいこと探しの旅に出た」という話から始まった時は、震えました。
聞いていくうちに、ちゃっきーさんのお母さんはじめ周りの親戚のすごさにも圧倒されましたね〜。
池田町に、こんな希望を持って意欲的に働いている同世代がいるということに気づけたことは
私にとっても、すごく活力を与えてくれることでした。
池田町で大変なことも、良いこともひっくるめて
ここでの暮らしとどう向き合っていくか、ということが今回のちゃっきーさんの語りの中にありありと映し出されていて。
こういうひとりひとりのミクロな語りにこそ、等身大の暮らしのリアルがあるよなぁと
ひしひしと感じた次第であります。
ちゃっきーさん、ここまで読んでくれた方、池田屋DMO準備室の方々、どうもありがとうございます。
まりこ
(本名 川上真理子)
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大都市で24年間をTO DO(したいこと)ファーストで
生きてきて、大学3年の時に自分の在り方の大切さ
に気づく。
ご縁がありたまたま出会った池田町での
素朴で等身大な人や自然に惹き付けられ
大学院卒業後、新卒無職で池田に移住。居候ちう。
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現在の活動はこちら👇
●池田町見習い人(めざせ何でも屋)
●一般社団法人の立ち上げ手伝い
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好きな食べ物)ちんころいも※池田町限定
現在、畑仕事や古民家改修により筋肉強化中。