ブロロロロロ....
毎週月、水、金の午前中に見られる、池田町の日常風景。
一体このトラック、何を運んでいるのでしょうか?のぞいてみましょう。
どーーん!!!
紙袋に包まれているのは、各家庭から出た生ゴミ。
そう、このトラックは生ゴミ回収車なのです。
池田町は、町ぐるみで家庭や町内観光施設から出る生ゴミの堆肥化、その名も「食Uターン事業」に取り組んでいます。
始まったのは、2002年のこと。(さっき「日常風景」と言ったけれど、2002年より前にはなかった風景なのです!)
約20年間続いている食Uターンは、池田町のまちづくりを特徴づける要となっています。
どっからどう見ても「いいね!!」だらけの堆肥化事業。
どのように始まったのでしょうか?
「池田町が生ゴミを堆肥化している」ということは知っていても、その背景を知る人は多くないのでは。
気になってしょうがない川上真理子、立ち上げ時の関係者に話を聞いてまいりました。
堆肥化事業は、一石三鳥だった
堆肥化の話が持ち上がったのは、2000年頃。
堆肥化事業が始まった背景には、主に3つの事柄があります。
1つ目は、牛糞問題。
池田町の最南端に位置する金山集落では、1992、3年頃から牛の畜産が営まれています。
当時、そこで出た牛糞が積み上げられ、ハエがたかり、においもきつく、集落からは「なんとかして欲しい」と懇願されていたそうです。
牛糞をどうにかすることはできないだろうか?という問いは、切実なものでした。
2つ目は、環境政策。
2000年頃、日本の環境政策の潮流として、ゴミの減量などに関して注力されていました。福井県も例外ではありません。
特に水分を含むために重くなる生ゴミは、ゴミの減量をめざす上で取り組むべきポイント。
そこで県は、各家庭で生ゴミ処理機を購入するための補助金を組むことを決定し、各市町村へも補助金助成の協力を呼びかけました。
しかし!池田町は県内で唯一、補助金助成を拒否。
池田のような小さい町なら家電製品1000世帯分買うよりも、町ぐるみで始めてしまった方がいい。
町長は断言します。
「補助金やらない代わりに、独自の方法でやります」
もともとゴミの減量化をねらった動きでしたが、池田町で資源の循環への転換が起きたのです。
3つ目は、池田町のゆうきげんき正直農業の始まりです(2000年〜)。
ゆうきげんき正直農業とは、化学肥料を使わずに、農薬の使用を極力減らすことで、自然や人に優しい農業をめざす池田町独自の農業。(詳しくはこちら)
なるべく化学肥料を使わないということは、土そのものの質が問われます。そこで必要となったのが、堆肥です。
池田町で牛糞を使った堆肥を作ることができれば、
①牛糞問題も解決するし
②環境政策にもなるし
③池田のおばちゃん、おじちゃんらがする畑が肥えて、良い作物もできる。
堆肥化事業は、輝く一石三鳥だったわけです!
こうして牛糞混合堆肥を作ることが決定したのは、2000年のことでした。
「町民が回収したら、かっこいいよね」、始まった運用実験
堆肥化が決定した後、大きな壁が現れました。
「どうやって生ゴミ回収する?」問題。いわば、経験者がいない中で運用設計をいちから考えていく挑戦です。
生ゴミの回収は、外部委託することもできます。
しかし、町長がひとこと。
「町民が回収したら、かっこいいよね」
早速、農協や役場の職員の集まって話し合うところから始まりました。
どうしたら、出す側も回収する側も気持ちよく取り組めるだろうか?
回収時の生ゴミの臭い対策はどうするか?
週に何回回収するのがベストだろうか?
山口県や栃木県など、堆肥化事業に取り組んでいる自治体の視察を重ねて、ひとつひとつ考えていきました。
ある程度やり方が見えてきたところで、役場は2度の運用実験を行います。
1度目は、役場職員で実際に生ゴミを回収する実験。
2度目は、町民の参加も募っての生ゴミ回収実験。
試行錯誤を経て、できたのが現在の回収方法です!
生ゴミは、水気を切って新聞紙でくるみます(右)。それを、指定の紙袋(左)に入れます。
余談ですが、紙袋や紙袋に使われているノリ、新聞紙のインクなどを堆肥化して大丈夫なのか?ということまでひとつずつ確かめたそうです。
(大丈夫だとわかったので、この形になっています!)
天然素材の紐でしばって、決められた曜日に各集落のゴミステーションへ出す。と!
そして、担当の人がトラックで町内を回って回収します。
どーん!生ゴミ回収車です。
もともと一般的なダンプカーだったものを、面白楽しくサーカスみのあるデザインにしたそうです。
この車にも創意工夫があったのでした!
ひとつ欠けても成り立たない、堆肥化事業を支えているもの
こうして池田町で始まった食Uターン事業は、今年で22年目を迎えました。
施設の老朽化と共に継続ができなくなるケースが多い堆肥化事業ですが、池田町で20年以上続いているということは改めてすごいことです。
どうして続いてこれたのか?これからも続くことができるのだろうか?
記事の最後に、インタビューを通して見えてきた、食Uターン事業を支えている複数の要因についてまとめたいと思います。
お話をお伺いする前、私に見えていた食Uターン事業の姿はこんな感じでした。
しかし、食Uターン事業ができた背景を知っていくうちに、複数の事柄がその土台となって、どれかひとつでも欠けたら成り立たない様相を呈していることに気づかされました。
どーーーん!私の脳内、BEFORE/AFTER。
まず、土台となっているのは、「先人の有機農業」です。
池田町では1980年代頃から、お米農家さんたちによって、有機のお米をつくろうという機運が醸成されていたそうです。
つまり、突然堆肥化の話が持ち上がったのではなく、早い段階から農家さんによって環境意識の素地がつくられていたということ。
これは、とても重要なポイントだと思います。
次に、「牛糞」と「畑をする人と畑ができる環境」。
町ぐるみで堆肥化事業に取り組む場合は、牛糞、馬糞、鶏糞、いずれかが必要です。
まず、池田町で畜産業を営んでいる方がいるから、牛糞があるということ。牛糞なしには、食Uターン事業は成り立ちません。
そして、牛糞と生ゴミを堆肥化した土を、使う人と畑があるということ。
堆肥が出来上がっても、使う人がいなければ循環を生むことはできません。(特に、都市部で堆肥化事業を行う自治体が抱えがちな問題です)
そして、「町内の環境問題に関する強いNOの姿勢」です。
池田町では、第三者によって風力発電の設置や産業廃棄物処理場建設の話が出ています。
これらに関して、池田町は町としてNOの姿勢を示しています。
しかし、環境に力を入れないことには、NOと言えない
環境に関して「しっかりやれることをやって言おう」というスタンスを貫くのが池田町です。
町内における環境問題全体に関して理にかなった姿勢を示すためにも、堆肥化事業にしっかり取り組んでいくという意思も、食Uターン事業を支えています。
そして、「当事者意識」。
ひとことでまとめてしまうと簡単に聞こえますが、これが1番肝心な気がします。
町ぐるみで堆肥化事業を行う場合、行政だけにやる気があっても、どうしようもありません。
なぜなら、ゴミを出すのも、回収するのも、町民だからです。多くの人に「いっちょやるか!」という気持ちがなければ成り立ちません。
まず出す側の当事者意識としては以下のようなことが挙げられます。
「回収する人が気持ちいいように生ゴミを出すぞ」
「生ゴミを出す時のルールをちゃんと守るぞ」
「自分らの土に還ってくるものだから、生ゴミ以外のゴミを入れないように気をつけなきゃ」
次に回収する側の当事者意識も大事です。
「回収当番になって堆肥化事業の手伝いをしたい」
「自分の当番を忘れないように行くぞ」
こうした当事者意識があるからこそ、堆肥化設備老朽化の際に、税金を投じることのコンセンサスを得ることができます。
町民ひとりひとりの食Uターン事業に対する積極性は、事業をうまくまわしていくための要です。
最後に、「回収の担い手」です。
生ゴミの回収は、有志の町民や役場職員が担当しています。
ある程度の人数を集めることで、担当の頻度を適切に調整していくことも、続ける上で重要です。
担い手の多くは高齢者のため、食Uターン事業の継続も、高齢化の問題を免れないのです。(上記で述べた畑をする人もしかり)
現在、事業はNPO法人環境Uフレンズによって運営されています。
Uフレンズでは、会員募集中!食Uターン事業に関わってみたいと思った方は、ぜひ回収当番どうですか〜〜〜!(私もやってます)
自分事として捉えているから、うまくまわる町ぐるみでの堆肥化事業。
「池田町らしさ」の成り立ちを垣間見れたような気がしました。
まりこ
(本名 川上真理子)
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大都市で24年間をTO DO(したいこと)ファーストで
生きてきて、大学3年の時に自分の在り方の大切さ
に気づく。
ご縁がありたまたま出会った池田町での
素朴で等身大な人や自然に惹き付けられ
大学院卒業後、新卒無職で池田に移住。
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現在の活動はこちら👇
●池田町見習い人(めざせ何でも屋)
●ライター
●池田町のシェアハウス「川のいえ」
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好きな食べ物)ちんころいも※池田町限定
現在、畑仕事や古民家改修により筋肉強化中。